「流布」という言葉は、特に「風説の流布」という形で法律や企業のリスク管理の分野で重要視されています。虚偽の情報を広く伝えることで、企業の信用や業務に深刻な影響を及ぼす可能性があるため、適切な対応が求められます。本記事では、流布の法律的な意味や具体例、企業が取るべき民事・刑事対応の手続き、そして被害に遭った際の弁護士相談の重要性までを詳しく解説します。流布に関する知識を深め、適切な対処法を理解しましょう。
1、風説の流布とは?
風説の流布は、虚偽の情報を不特定多数に伝播させる行為を指し、主に企業の信用や株価に悪影響を及ぼす場合に問題となります。ここでは風説の流布の意味から、具体的な行為例、そして法的責任について解説します。
(1)風説の流布に当たる行為の例
風説の流布とは、単なる噂話ではなく、虚偽の情報を意図的に広める行為を指します。
例えば、「X社が倒産する」という根拠のない情報をSNSや口コミで広めることや、「Y社が身売りを検討している」という虚偽の噂を流すことが典型例です。
また、個人のプライベートに関する虚偽の情報、たとえば「Z社の社長が不倫している」というデマも風説の流布に該当します。これらの情報は真実でないにも関わらず、多数の人に伝わることで企業や個人の信用を著しく損なう可能性があります。
(2)風説の流布をした者が負う民事責任・行政上の責任
虚偽の風説の流布によって企業や個人が損害を受けた場合、流布した者は民事上の不法行為責任を問われます(民法709条)。
損害賠償請求の対象となり、被害者は損害の回復を求めることが可能です。
また、競合他社の信用を不正に害する目的で流布が行われた場合は不正競争防止法にも抵触し、差止請求など行政的な対応を受けることもあります。
さらに、有価証券の相場操作を目的とした風説の流布は金融商品取引法違反となり、課徴金納付命令や刑事罰の対象となります。
このように、流布は複数の法律に抵触し、民事・行政・刑事の各方面から責任追及が可能です。
(3)風説の流布について成立する犯罪
虚偽の情報を広めて他人の信用を毀損した場合、刑法第233条の信用毀損罪や偽計業務妨害罪が成立します。
これらの罪に問われると、3年以下の懲役または50万円以下の罰金が科される可能性があります。
また、虚偽の風説が公然とされた結果、社会的評価を下げた場合は名誉毀損罪(刑法230条)が成立し、同様に3年以下の懲役や罰金が科されます。
さらに、有価証券の取引を目的とした風説の流布は金融商品取引法に基づき、10年以下の懲役や1000万円以下の罰金が科される重罪となることがあります。
法人の関係者が関与した場合には法人自体にも7億円以下の罰金が科されることがあるなど、非常に重い処罰が科される点に注意が必要です。
2、【民事編】風説の流布・名誉毀損への企業の対応
企業が風説の流布や名誉毀損の被害を受けた際には、迅速かつ的確な民事対応が求められます。ここでは具体的な対応策として投稿の削除請求、投稿者特定のための発信者情報開示請求、そして損害賠償請求の流れを解説します。
(1)風説の流布に当たる投稿の削除請求
虚偽の風説がSNSや口コミサイトに投稿された場合、まずは投稿先の管理者に対して削除請求を行います。
多くのプラットフォームは虚偽情報の拡散防止を目的としたポリシーを持っているため、正当な理由があれば削除に応じるケースが多いです。
もし管理者が削除を拒否した場合は、裁判所に投稿削除の仮処分を申し立てることも可能です。裁判所は、投稿により企業に著しい損害や急迫の危険があると認めれば仮処分命令を発令し、速やかな削除を実現します。
(2)風説の流布をした人の特定|発信者情報開示請求
損害賠償請求を行うためには、まず投稿者を特定しなければなりません。
匿名の投稿者を特定するために、投稿先のサイト管理者やインターネット接続業者に対して「発信者情報開示請求」を行うことが一般的です。
2022年のプロバイダ責任制限法の改正により、これらの請求を一括して行う「発信者情報開示命令」の制度が新設され、手続きが簡素化されました。
ただし、状況によっては従来の二段階手続きのほうが適している場合もあるため、弁護士に相談しながら進めることが望ましいです。
(3)投稿者に対する損害賠償請求
発信者情報開示請求で投稿者が特定できたら、損害賠償請求を検討しましょう。
まずは投稿者に連絡をとり、示談交渉を試みるのが一般的です。示談が成立しない場合は、訴訟を提起することになります。
この過程では法的な根拠や証拠の準備が重要となるため、弁護士に依頼して専門的なサポートを受けることが、適正な損害賠償を得るために非常に効果的です。
3、【刑事編】風説の流布・名誉毀損に関する刑事告訴の手続き
風説の流布を犯罪として刑事告訴する場合には、所定の手続きに従う必要があります。以下では告訴から刑事裁判までの流れを具体的に解説します。
(1)告訴状の提出
刑事告訴は、被害者またはその代理人が警察署や検察庁に告訴状を提出することから始まります。
告訴状には、被害の内容や加害者の特定情報、証拠などを詳細に記載する必要があります。
告訴状提出後は、警察や検察が捜査を開始します。
(2)捜査・加害者の特定
警察や検察は、匿名投稿者の場合は発信者情報の開示請求や捜査を通じて加害者を特定します。
特定が完了すると、加害者に対する取り調べや証拠収集が行われます。
この段階で被害者側の関係者も参考人として事情聴取を受けることがあります。
(3)起訴・不起訴の判断と刑事裁判
捜査の結果、検察官は起訴するか不起訴にするかを判断します。
起訴されると刑事裁判が開かれ、被告人の有罪・無罪および量刑が審理されます。
被害企業の代表や代理人は、公判で被害の実態や心情を陳述することができ、裁判の重要な一翼を担います。
4、風説の流布・名誉毀損の被害は弁護士に相談を
風説の流布や名誉毀損は企業にとって深刻な損害をもたらす問題です。被害を受けた場合は、迅速な対応が求められます。ここでは、弁護士に相談するメリットと具体的なサポート内容について解説します。
(1)被害回復のための迅速な対応支援
弁護士は、問題投稿の削除請求や投稿者特定の手続きを迅速に行い、被害の拡大を防ぎます。
法律的な知識に基づき、適切な証拠収集や法的手続きをスムーズに進行できるため、企業の業務に支障をきたさずに解決を図れます。
また、SNSや口コミサイトの運営者との交渉も弁護士が代理することで、確実かつ迅速な対応が期待できます。
(2)損害賠償請求や刑事告訴のサポート
損害賠償請求では、法的根拠や証拠の整理、示談交渉、必要に応じて訴訟提起まで弁護士が全てサポートします。
刑事告訴を検討する場合も、告訴状の作成から警察・検察との連絡調整、裁判での代理まで幅広く支援します。
これにより、加害者への厳正な対応が可能となり、被害回復への道筋を確実なものにします。
(3)経営リスク軽減と再発防止策の提案
弁護士は、風説の流布被害の背景や原因を分析し、再発防止のための社内ルール整備や情報管理体制の強化など具体的な対策を提案します。
これにより、企業のリスクマネジメントを強化し、今後の経営安定に寄与します。
風説の流布への対応は専門知識が不可欠なため、早期に専門家へ相談することが重要です。
5、まとめ
風説の流布は虚偽の情報を不特定多数に広め、企業や個人の信用を毀損する重大な問題です。
被害に遭った場合は、まずは投稿の削除請求を行い、次に発信者情報開示請求で投稿者を特定し、損害賠償請求や刑事告訴を検討しましょう。
これらの対応は迅速かつ的確に行うことが被害の拡大を防ぐ鍵となります。
弁護士に相談すれば、法的手続きのサポートから投稿者の特定、損害賠償請求、刑事告訴まで多角的に支援を受けられます。
風説の流布による被害は企業の存続にも関わるため、問題を発見したら速やかに専門家へ相談し、適切な対処を講じることが重要です。
信頼回復と企業価値の維持のために、専門家の力を借りて正しく対応しましょう。
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